大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)140号 判決

一、転用困難性について

成立に争いのない甲第二号証(本願特許公報)、同第四号証(第二引用例)を総合すると、本願各発明が工具交換腕を使用する自動工具交換装置としてキー、キー溝方式により工具のキーと、主軸および工具貯蔵ソケツト(以下「ソケツト」という。)内部のキー溝の係合を確保して稼働するためには、その工具交換腕に、主軸およびソケツト中の工具を、同じ角度位置と姿勢を保ちつつ掴んで引出し、そのままの相対関係の位置を崩さずに正確に一八〇度回転させて再び工具を主軸とソケツトにはめこむための工具把持装置を備えることが必須の技術的前提となつているところ、審決が工具交換腕を有する自動工具交換装置の例として示された第二引用例の工具交換腕にはそうした内容をもつ積極的な把持の技術はなく、顎で工具を支えるだけのものに過ぎないことが認められる。

したがつて、本願各発明における工具把持装置は、工具を積極的につかみないしくわえる機能を有する装置を意味するのに第二引用例にはそのような工具把持装置はなく、これを示唆するものもないことが明らかである。

しかしながら、成立に争いのない乙第一号証(小峰海外資料株式会社発行「マシニスト」一九五九年一一月号)によれば、本願出願当時、自動工具交換装置において工具を積極的にくわえる機能を有する工具交換腕が周知であつたことが認められる。そして成立に争いのない甲第三号証(第一引用例)によれば、自動工具交換装置として同じ技術分野に属する第一引用例にキー、キー溝方式がみられるのであるから、前記技術水準のもとにおいては、第二引用例のような工具交換腕を有する自動工具交換装置における交換腕に工具が交換中動かないよう工具を積極的にくわえる装置を施してスプライン方式に代えてキー、キー溝方式を採用することは、当業者であれば容易に考えられるところである。

原告は前記乙第一号証に記載された工具の把持はキー、キー溝の存しない工具に関するもので、角度位置を正確にあわせるものではないというけれども、乙第一号証における把持装置も工具の移動中に動かないようにこれをしつかりつかんでいる点において、本願各発明と何ら異るところはない。のみならず、本願各発明の工具把持装置においても、この装置だけでキーとキー溝との係合が直ちに行われるものではなく、甲第二号証によれば、本願各発明も発明の詳細な説明中に工具は運搬された後に把持装置の中で、キー、キー溝が完全に整合するまで動かされるものである旨記載されているところからみても、その目的において乙第一号証においてみられる把持の技術との間に本質的な差異は認めがたい。

そうすると、転用困難性に関する原告の主張は採用することができない。

二、作用効果について

1 工具交換時間について

前記甲第二、三、四号証を総合すると、第一引用例のものは、スピンドルを縦横方向に移動させ、テーブルは長手方向に移動させた上で工具を主軸にとりつけるという複雑な操作を必要とするので工具交換腕の操作による本願各発明よりは、工具交換に要する時間が長くなることは避けられず、第二引用例のものは工具交換腕に積極的に掴む把持装置を備えないから工具を保持して一八〇度回転する交換腕の回転速度は本願各発明のように迅速にすることはできず、したがつて本願各発明が各引用例に比して工具交換時間を短縮した効果があることは明らかである。しかしながら、乙第一号証をも参照すると、このような効果は、工具交換腕に前項認定のような周知の積極的な把持装置を設けたことに基ずく効果であつて、技術水準からみて当業者の予測できる範囲のものと認められるので、格別顕著なものとはいい難い。

2 主軸の方向について

前記各証拠によれば、本願各発明の主軸の方向は縦型、横型とも可能であることが認められるが、この効果も工具交換腕に周知の積極的な把持装置を設けたことによる効果であつて、前記同様の理由で予測できる範囲をでないものと認められ、格別顕著なものとはいえない。

3、工具の柄の型について

前記各証拠によれば、本願各発明においては工具の柄がストレート、テーパーいずれの型も使用可能なことが認められるが、これも前同様、工具交換腕に周知の把持装置を設けたことによる効果で予測できる範囲をでないものと認められ、格別顕著なものということはできない。

4、キー、キー溝方式による点について

前記各証拠によれば本願各発明が原告主張のような効果を備えていることが認められるが、いずれもキー、キー溝方式を採用したことによる結果であつて、同じくキー、キー溝方式を採用している第一引用例も同様な効果を備え、これと対比すれば、その間に効果の差異を認めることができず、したがつてかかる効果は第一引用例から予測できるところと認められ、顕著なものとすることはできない。

そうすると、本願各発明の作用効果が顕著であるとする原告の主張もまた採用することができない。

三、むすび

したがつて、原告の本訴請求は失当であるから棄却する。

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